靄の夜に岩の音を響かせる海の怪
いしなげんじょ
石投げんじょ / 石投女 / 海塞ぎ(類話) / 山塞がり(類話) / タテエボシ(類話)
靄の底に、ありもしない岩壁がそびえる。ガラガラと崩れる音に船を返せば、翌朝の海はただ凪いでいて、昨夜の岩などどこにもない。海が見せた、一夜かぎりの島。
概要
いしなげんじょは、九州北部の島の多い海に伝わる海の怪異。旧暦五月の梅雨どき、靄の深くかかった夜に漁師が沖へ出ると、靄の中に小島の岩陰が見えたかと思うや、突然ガラガラと岩の崩れ落ちる音がする。漢字では石投げんじょと書く。
出現
現れるのは湿っぽく靄の深い夜の海上。釣りに出た漁師の前で、立ちこめた靄の中に小島の岩陰が見えたと思うと、突如として岩が崩れ落ちる大きな音が響く。驚いて船を返し、翌日の晴れ間に同じ場所へ行ってみても、そこには何の異状もない。
伝承
長崎県西彼杵郡の江ノ島近海や佐賀県鳥栖市江島町に伝わる怪現象。『綜合日本民俗語彙』や柳田國男『妖怪談義』は磯女と同系の海の妖怪とみなす。老人の投石説や悪天候下の錯覚とする説、捕鯨海域ゆえ鯨を正体とみる説もある。
特徴
はっきりした姿を見せず、靄の中に幻の岩礁や小島を浮かべて船人を惑わす、海の天狗・岩礁の類。岩の崩れる轟音で漁師を驚かせて追い返すが、翌日には痕跡ひとつ残さない。奄美の海塞ぎ、佐渡のタテエボシなど、船の行く手を阻む海の怪異と同じ血を引く。