振り向くと老爺の顔をした妖怪
いやみ
否哉 / いやや / いなや
姉によく似た後ろ姿。「姉ちゃ!」と呼びかけた小僧が見たのは、似ても似つかぬ嫌らしい老爺の顔だった。笊は落ち、米は散り、あとにはただ泣き声だけが残る。うしろ姿ほど、あてにならぬものはない。
概要
いやみは、後ろ姿が若く美しい女に見える妖怪。美人だと思って声をかけた者が正面に回ると、しわだらけの老爺の顔がこちらを向いている。害を加えるより、思い違いをした相手を驚かせることを常とする。鳥山石燕の描いた「否哉」に連なる。
出現
仙台の城下では、夕暮れの道で前を歩く女に出会う。知り合いに似た後ろ姿につい声をかけると、振り返ったのは似ても似つかぬ老爺の顔。あまりの意外さに腰を抜かす者もいたという。似た話は中国地方や山陰にも伝わる。
伝承
鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』(1781年刊)に「否哉(いやや)」として描かれた妖怪に連なる。後ろ姿は美女、水面に映る顔は老人という姿で、前漢の東方朔が虫を「怪哉」と名づけた故事に倣った命名とされる。石燕の創作と見る説が有力である。
特徴
後ろ姿は若い女に化け、期待して近づいた相手の前で振り返り、しわだらけの老爺の顔を見せて驚かす。爪や牙で襲うことはなく、致命的な害も与えない。相手が抱いた思い込みを、正面の一瞥で裏切ることこそがこの妖怪の得手である。