薄絹のごとくたなびく煙の精
煙羅煙羅
えんらえんら / 煙々羅 / えんえんら
掴もうとするな。羅は風に破れ、煙は指を逃れる。ただ立ちのぼるのを、心静かに眺めていよ。
Overview
煙羅煙羅(煙々羅)は、鳥山石燕の画集『今昔百鬼拾遺』に描かれた煙の妖怪。立ちのぼる煙がもつれ、その中に怪しい顔がぼんやり浮かぶ姿で表される。薄絹(羅)のように風に破れやすいことから名づけられたとされ、具体的な伝承を持たない石燕の創作妖怪と考えられている。
Encounter
立つのは、蚊遣り火や竈のくすぶる貧しい家のあたり。ゆらめく煙がふと凝って人の顔をなし、こちらを覗くように傾ぐ。追えば風に乱れて形を失い、掴もうと伸ばした手はただ薄煙をすり抜けるばかり。心にゆとりのある者でなければ、その顔には気づけないともいう。
Lore
石燕は「しづが家のいぶせき蚊遣の煙むすぼゝれて、あやしきかたちをなせり」と解説し、薄絹が風に破れやすいさまになぞらえて煙々羅と名づけたと記す。裏づけとなる民間の言い伝えはなく、煙そのものを妖怪に見立てた例は稀で、石燕晩年の趣向が生んだ一体とされる。
Traits
つかみどころのなさこそが煙羅煙羅の本性で、実体を持たず、風の向くまま伸び縮みする。害をなす力は伝えられず、ただ煙の立つところに現れては、見る者の心のありようを映すように顔を結ぶ。散らされてもまた別の煙に宿り、火の絶えぬ限り幾度でも立ちのぼるという。