「ガゴゼ」の語源となった、鐘楼の鬼
元興寺
夜ごと鐘楼に忍び寄る足音は、生前の恨みの重さそのものだった。怪力の童子に髪ごと頭皮を引き剥がされてなお、鬼は闇の奥へと逃げ延びた。その名は今も、子を叱る大人の口に「ガゴゼが来るぞ」として残っている。
Overview
元興寺は、寺の鐘楼に夜な夜な現れて童子を殺めたという霊鬼。雷神の子として生まれた怪力の童子・道場法師に頭皮を引き剥がされて逃げ去った、『日本霊異記』所載の鬼である。
Encounter
夜が更けてから、寺の鐘楼に現れる。松明も届かぬ暗がりに息をひそめ、鐘を撞きに来た童子や下働きの者が一人で近づくのを待ち構える。日暮れ後の鐘楼への立ち入りを、寺の者たちは長く恐れ続けたという。
Lore
平安初期の説話集『日本霊異記』上巻に載る鬼退治譚に由来する。尾張国の農夫が助けた雷の子が元興寺の童子「道場法師」となり、鐘楼で人を殺めていた鬼と組み合って頭皮を引き剥がして退治した顛末を記す。同時代の詩文集『本朝文粋』にも関連する記述が見える。
Traits
並外れた膂力を持ち、素手で人を殺めるほどの怪力を誇る。捕らえられてもあっさりとは屈せず、髪ごと頭の皮を引きちぎられてなお闇へ逃げ延びる執念深さを見せた。正体は生前の悪行で恨みを買った下男の霊とされ、死してなお寺に居着き続けている。