妬みで人に憑く、見えざる生霊
牛蒡種
ごんぼだね / ごぼうだね / 七十五匹
羨まれてはならぬ。あの家の者に妬まれた者は、高熱に浮かされ、我を失う。狐でも、犬神でもない。憑くのは、人の心だ。
Overview
牛蒡種は、岐阜県の飛騨・美濃や長野・福井などに伝わる憑き物の一種。狐や犬神と違い、憑くのは動物霊ではなく人の生霊とされる。牛蒡種の家筋の者が妬みや恨みを抱くと、その相手が発熱や精神の異常に見舞われると信じられ、家々の縁組を左右するほど忌まれた。
Encounter
姿は見えず、いつ憑かれたともわからない。牛蒡種の血筋とされる家の者に、作物や暮らしぶりを羨まれ、あるいは恨みを買ったとき、それは起こる。にわかに高熱を発し、うわ言をくり返し、心を病む——そうした災いをもって、人はようやく憑かれたと知るのである。
Lore
飛騨・美濃の憑きもの俗信では、牛蒡種は特定の家筋に憑いて代々受け継がれるとされた。飛騨には、九尾の狐が化した殺生石を源翁心昭が砕いたとき、その一片が飛騨に飛んで牛蒡種を生んだと伝え、七十五匹の霊が憑くとして『七十五匹』の名でも呼ばれる。名は修験の護法実、または種の付きやすさに由来するといわれる。
Traits
それ自体に形はなく、家筋の者の妬心を糧にして相手へ乗り移る。厄介なのは、郡長や警察署長のように立場の強い者には憑かないとされる点で、弱い者ほど狙われやすい。憎しみや羨みという人の情から生じるがゆえに、憑いた霊を落とすにも祈禱者の力と、人の心のありようが問われた。