疫病の流行を予言する、人面牛身の霊獣
クタベ
クタベ / くたべ / クダベ
山道の先に、人の顔をした獣が立っていた。逃げようとした足が止まる。獣は静かに告げた――やがて訪れる病のことを。恐れるな、この姿さえ覚えておけば。そう言って、獣は霧の中へ消えた。
Overview
人の顔に牛のような四足の体を持ち、腹の両脇にも目があるとされる予言獣。数年のうちに疫病が流行ると予言し、自分の姿を写した絵を持てば難を逃れられると説いた。
Encounter
越中国立山(現在の富山県)の山中、薬種を採りに入った採薬者の前に不意に姿を現したと伝わる。里に降りて人前に出ることはなく、深い山道でだけ、ふと行く手に立っているという。
Lore
文政10年(1827)冬から翌年にかけて、疫病を予言する摺物として江戸で広まった。『虚実無尽蔵』はその年の流行を、『寛政文政間日記』は翌年に絵図が出回ったことを伝え、『道聴塗説』にも「クダベ」の名で紹介される。立山信仰に関わった人々の記録にはこの名が見えず、疫病への不安が生んだ話ともいわれる。
Traits
自ら人を襲うことはなく、山中で出会った者にのみ迫る疫病を告げる。「自分の姿を描き写して人に見せれば、その病から逃れられる」と説き、件(くだん)や白沢(はくたく)と同じく、絵姿そのものに疫病を退ける力が宿るとされる。