井戸の底から立ちのぼる白骨の怨念
狂骨
きょうこつ
井戸をのぞくな。底の暗がりから見返してくるのは、お前の顔ではない。忘れ去られた骨が、忘れた者を恨んでいる。
Overview
狂骨は、鳥山石燕の妖怪画集『今昔百鬼拾遺』に描かれた妖怪。井戸の中に打ち捨てられた白骨が、晴らせぬ怨みによって化けたものとされる。古い言い伝えとしての裏付けは乏しく、石燕が言葉遊びから生み出した創作とみられている。
Encounter
打ち捨てられて久しい古井戸が、その棲み処。釣瓶をたぐり上げると、白髪の残る白骨が、白い経帷子をまとった幽霊のように、暗い水面からゆらりと立ちのぼってくる。誰にも顧みられぬまま沈んでいた骨が、ようやく地上へ現れる瞬間である。
Lore
石燕は『狂骨は井中の白骨なり』と記し、世間で程度の甚だしいことを『きょうこつ』と言うのは、この怨みの激しさに由来すると添えた。語源には、肉の落ちた白骨を指す『髐骨(きょうこつ)』や、津久井郡の方言で素っ頓狂を意味する『キョーコツナイ』を挙げる説がある。
Traits
行き場を失った怨みだけを支えに、白骨のまま動きだす。井戸をのぞき込んだ者に取り憑いては、その胸へ激しい恨みの念を植えつけるという。名のとおり、常軌を逸するほど甚だしい怨念こそが、この妖怪の正体だと語られる。