都を恋うる怨念が化けた、清涼殿の雀
入内雀
冠を奪い、都を追われ、それでも未練だけは陸奥に置いてこられなかった。清涼殿の片隅で飯をついばむ小さな影は、蔵人頭になれなかった男の、消えぬ執心そのものである。
Overview
入内雀は、陸奥へ左遷され不遇のうちに没した歌人・藤原実方の怨念が化したと伝わる雀。都に残した無念を晴らすかのように禁裏の奥深くまで入り込み、供えられた飯をついばみ続けたという。
Encounter
現れるのは、天皇の御座所である清涼殿の奥。毎朝一羽の雀が誰にも気づかれず殿舎に入り込み、殿上に据えられた台盤の飯にとりつく。追い払っても翌朝にはまた現れ、いつしか誰の目にも「ただの雀ではない」と映るようになった。
Lore
鎌倉初期の説話集『古事談』を初出に、鎌倉中期の『十訓抄』第八など複数の文献に伝わる。行成との宮中口論から陸奥守に左遷された実方が任地で没した後、清涼殿の台盤に居ついて飯をついばむ雀が現れ、人々はこれを実方の執心が雀に転じたものと語ったと記す。
Traits
並外れて人を恐れず、警備の厳しい禁裏の奥にまで平然と入り込む。台盤の飯を瞬く間に食い尽くす早業を見せるが、暴れたり人を傷つけたりはせず、ただ都への執着だけを行動で示し続ける。追われても懲りずに舞い戻る執念深さが、生前の恨みの深さを物語っている。