空家に居据わる毛だらけの殺し屋
オハチスエ
オハチスィエ / Ohacisuye / 空屋の番人 / 空家の留守番
誰もいないはずの炉端に、もう一つの手が同じ煙管を叩く。真似が止んだそのとき、爺の刀はもう鞘を離れている。
Overview
樺太アイヌに伝わる魔物で、名は空屋の番人を意味する。アイヌが季節ごとに海辺の夏村と山手の冬村を行き来する間、無人になった小屋へ無断で住みつくのを専門とする。魚皮の粗末な衣をまとった毛だらけの老爺の姿で、よく斬れる刀を携え、人でも家畜でも相手構わず殺傷したと各地に語り伝えられる。
Encounter
人々が季節移動で立ち去り、軒並み空巣になった夏村や冬村の小屋に潜む。誰もいないはずの空家へ入り込むと、炉の向こう側に毛だらけの老爺が座り、こちらの一挙一動を黙々と真似ている。逃げようとした者を、抜き身の刀が容赦なく追う。
Lore
言語学者の知里真志保が樺太アイヌの口承を採録・訳出した、えぞおばけ列伝の第十二話、空家の留守番に記される。同話は岩波文庫のアイヌ民譚集にも収められる。原語はオハチスィエで、語源は空いている家を守る者と説明され、樺太各地に類話が伝わったとされる。
Traits
空家に居据わり、火を焚き煙草を吸う人の動作を、煙管を叩く音まで含めて逐一真似る。人真似のうちは静かだが、性質はひどく凶暴で、物凄くよく斬れる刀を手放さない。コタンケシの酋長を襲った際は、屋内へ飛びこんだ橇犬二匹を、頭と下半身が離れるほど無残に斬りきざんだ。