印旛沼に灯る亡者の陰火

カワボタル

川蛍 / かわぼたる

雨の夜の印旛沼、舟べりに青い火がひとつ、またひとつ。うるさく思って棹で払えば、火は砕けて一面に散り、生臭い脂となって手にまとわりつく。擦り落とそうとするほど広がるそれは、たぶん沼で死んだ誰かの、まだ消えたくない光。

カワボタル figure art

Danger and Rarity

D
戦闘力

直接人を害する力は伝えられていない。

C
敵対性

脅かし惑わせはするが、深追いはしない。

A
稀少性

限られた土地でだけ、まれに語られる。

Overview

カワボタルは、千葉県印旛沼に現れる青白い怪火。雨の夜、蛍のような光が水面から立ち上がって船に近づき、棹で叩くと砕けて手や船一面に散る。熱くはないが油のようにぬるぬるして生臭く、洗っても落ちない。滋賀の蓑火や新潟の蓑虫火に連なり、亡者の陰火ともいわれる。

Encounter

夏から秋の雨の降る夜、印旛沼に舟を出して夜釣りをしていると、水中から青い火がひらひらと燃え上がり、舟へ近づいてくる。数はしだいに増え、力任せに叩けば砕けて一面に散り、体や舟にまとわりつく。目をつぶって念仏を唱えると、火はふっと消えるという。

Lore

赤松宗旦『利根川図志』(安政5年=1858年頒布、全6巻)巻三に、印旛沼の俗信「川蛍」として記される。近江彦根の蓑火、新潟の蓑虫火と同系統の怪火で、亡者の陰火とも、狸や鼬の仕業ともいう。福井坂井郡では同種の火が石屋や大工には憑かないと伝えられた。

Traits

熱を持たない陰の火で、物を燃やすことはない。雨の夜の水面から湧き、舟や人のまわりに数を増やして漂う。叩けば砕けていよいよ散り、油のように粘って生臭い液となり肌や舟にこびりつき、洗ってもなかなか落ちない。石屋と大工にだけは憑かないという。

カワボタル cover image