島唄に呼ばれる娘の幽霊
カンテメ
かんつめ / かんつめ節の主人公
宴がいちばん盛り上がったころ、誰かがかんつめ節を歌い出す。すると座はふと静まり、青白い顔の娘が、いつのまにか輪の中に立っている。折檻に死んだはずの彼女は、恋しい人の歌に呼ばれて、今夜もそっと帰ってくる。
Overview
カンテメは、鹿児島県奄美大島に伝わる娘の幽霊。約150年前、青年・岩加那と恋仲になりながら主人に認められず、折檻の末に死んだ。成仏せず毎夜のように岩加那のもとへ現れ、彼が口ずさむ歌は「カンテメ節(かんつめ節)」と呼ばれた。青白い顔で酒宴の席にそっと立ち混じるという。
Encounter
現れるのは奄美の宴の席や、岩加那と語らった山あいの場所。青白い顔をした娘が、賑わう酒席の人々のあいだにいつのまにか立ち混じっている。誰かがかんつめ節を歌い出すと、それまでの喧騒がふと静まり返る――彼女がその歌に呼ばれて、そこにいるからだと語り合われた。
Lore
実在したと伝わる焼内間切須古(現・宇検村)の娘かんつめの悲恋を歌う奄美の島唄「かんつめ節」に由来する。茂野幽考『奄美大島民族誌』(1927年)が「カンテメ」の名を用いて以来、島外にもこの表記が広まった。奄美ではネリヤカナヤ(他界)へ去った死者の魂が神へ昇華するとされ、その死生観を背景に持つ。
Traits
生前のままの青白い顔で、夜ごと恋しい相手のもとに立ち現れる。人を害することはなく、宴の席や語らいの場にそっと混じって、ただそこにいる。人が死ねば魂は昇華して神や仏として崇められるという奄美の信仰のもと、彼女もやがて畏れと祈りの対象へと近づいていったという。
かんつめや名柄、岩加那や真久慈
奄美島唄「かんつめ節」