低くさまよう備前の怪火
チュウコ
中狐 / 宙狐 / ちゅうこ
「これはチュウコの行き逢いだ」。熱に浮かされた男を前に、居合わせた者はそう言った。医者に問えば、医者もただ「チュウコはチュウコだ」と答える。天狐は高く、中狐は低い――それだけが確かで、あとは誰も、あの火が何かを知らない。
Overview
チュウコ(中狐・宙狐)は、岡山県備前地方や鳥取県で、空中に見える怪火をさす呼び名。ふつうの狐火と違い、比較的低い空をさまよう火とされる。明治の妖怪研究家・井上円了は、高く飛ぶものを天狐、低く飛ぶものを中狐と区別した。低くさまようこの火にあたると身体の具合が悪くなるという。
Encounter
備前地方では、空中に低く漂う怪火としてチュウコが目撃される。邑久郡豊原村では老いた狐がチュウコに化すといい、同じ邑久郡の玉津村竜宮島では、雨模様の夜に提灯ほどの大きさの火が現れて宙狐と呼ばれ、ときに地面に落ちて周囲を明るく照らし、やがて跡形もなく消え去るという。行き逢い神のように、これにあたると具合が悪くなる。
Lore
チュウコは備前・鳥取の怪火伝承で、狐火の一種とされる。井上円了は『妖怪学全集』第5巻(原著1916年)でこれに「中狐」の字を当て、天狐と中狐を高低で分けた。村上健司編著『妖怪事典』(2000年)などにも宙狐として記録される。水木しげる『妖怪大全』は出雲でチュウコに熱にうなされた人を医者に診せた逸話を伝える。
Traits
夜の野を、提灯ほどの火が地に近く音もなく漂う。天狐が高みを飛ぶのに対し、中狐はあくまで低くさまよう。雨模様の夜には地に落ちて周囲を照らし、やがて跡形もなく消える。老いた狐が化けたものといい、行き逢った者はこの火にあたって熱にうなされ、身体の具合を崩す。だがその正体は、医者にも易者にも言い当てられない。