来客を頭痛で告げるアイヌの憑神

ノイポロイクシ

戸を叩く音より先に、こめかみが疼く。まだ見ぬ客が、山の向こうで足を踏み出したのだ。痛みが鋭ければ女、鈍ければ男。頭の奥に棲む古い霊は、名も顔も知らぬ誰かの足取りを、痛みの強弱にして持ち主にささやいてくる。

ノイポロイクシ figure art

Danger and Rarity

D
戦闘力

直接人を害する力は伝えられていない。

D
敵対性

人への害意はなく、時に福さえもたらす。

A
稀少性

限られた土地でだけ、まれに語られる。

Overview

ノイポロイクシは、北海道のアイヌに伝わる憑神(つきがみ)の一種。アイヌの信仰では人は誰しも生まれながらに憑神を宿すとされ、その中には超能力を持たせる特別な霊があるという。ノイポロイクシは、家に来客がある前兆として、憑かれた者に急な頭痛を生じさせて予知を告げる霊とされ、藤村久和『アイヌの霊の世界』に記録される。

Encounter

ノイポロイクシは遠くから来る見知らぬ客に限って、その到来を頭痛で知らせる。見知った相手が訪れるときには、この予兆は起こらない。憑かれた者は理由もなく頭が痛みだし、やがて戸口に見知らぬ人影が立つ。痛みの荒々しさや強弱から、その客の性別や年齢、訪ねてくるおおよその用向きまでを読み取ることができたという。

Lore

ノイポロイクシは、アイヌ文化・民俗の研究者である藤村久和の民族誌『アイヌの霊の世界』(小学館創造選書56、1982年)に記された憑神。同書はアイヌの霊魂観や憑神・巫術を扱い、来客を予知して頭痛を起こさせる霊としてこれを紹介する。憑神は個人の霊とともにこの世に来て胎児に憑き、その人が死ぬと遺体からあの世へ帰るとされる。

Traits

姿を持たず、憑いた人の頭の中に痛みとして現れる。遠方の見知らぬ客が近づくと、その気配を先んじて感じ取り、頭痛という形で持ち主に告げる。痛みが荒々しく激しければ女が、ゆるやかであれば男が訪れる。慣れた者はその痛みの質から、客の年齢や訪ねてくる用向きの概略までを言い当てた。見知った相手には反応せず、静かに沈黙する。

ノイポロイクシ cover image