アイヌの川に棲む二面の水神
ミンツチ
ミントゥチ / ミムトゥチ / ミントチ / フンドチ
濃霧の川辺で、前を行く小さな背中を見た。呼びかけても振り向かない。追いすがった足跡は、いつしか鳥のかたちに変わっていた。
Overview
ミンツチは、北海道のアイヌ民族に伝わる河童に似た水の精霊。疱瘡神と戦って水死した草人形チシナプカムイが変じたとされ、魚を操って人に大漁をもたらす一方、人や牛馬を水中に引き込むこともある、恵みと祟りを併せ持つ存在として語られる。
Encounter
釧路地方など北海道の川や沼のほとりに現れる。人間の子供ほどの背丈で前を歩く人影として姿を見せ、呼びかけても応えず、足音も立てずに歩き去る。追いかけるうちに足跡が不意に消え、いつの間にか見失ってしまうという。
Lore
アイヌの伝承では、オキクルミ神が疱瘡神パツムカムイと戦うために蓬を十字に組んだ草人形チシナプカムイを61体作り、その中で水死した個体がミンツチに変じたと語られる。金田一京助「北海道の河童」(『郷土研究』1巻12号、郷土研究社、1914年)など、明治・大正期の民俗調査によって本州の河童伝承と対比されながら記録された。
Traits
海亀に似た紫や赤色の肌を持ち、頭には髪が生え、足形は鳥に似る。両腕は体内でつながっており、片方を強く引くともう片方が縮むといわれる。魚族を意のままに操って漁師に大漁をもたらす一方、機嫌を損ねれば人や牛馬を水中に引きずり込み、病をもたらすこともある。