供養を怠ると涙する雛人形の霊
化け雛
夜半、屋敷のどこかで幼い泣き声がする。古びた木箱の蓋を開ければ、雛の頬はしっとりと濡れている――それは涙か、それとも積もった年月への怒りか。
Overview
数代経て霊が宿った雛人形。売られた先で夜な夜な泣き声をあげ、箱を開けると女雛が汗を流していたという。
Encounter
十分な供養をせずに手放された雛人形に宿るという。売られた先の屋敷では、ある時期からどこからともなく人の泣くような声や笛の音が聞こえるようになり、夜ごと戸棚の奥から泣き声が漏れる。蓋を開けて確かめると、しまわれていた女雛の顔がじっとりと汗ばんでいるのが常だという。
Lore
広島某町の孫三郎という者が、同じ町の女性を妻に迎えた際、実家に数代伝わる雛人形が持参された。孫三郎はこれを不要だとして商人の久敷助右エ門に売り渡したが、買い手がつかぬまま久敷家に仕舞われていた雛はやがて怪異を起こし、久敷家はこの雛をもとの孫三郎家に返し、孫三郎は全正院という寺に預けたと伝わる。
Traits
供養が済まぬまま長く放置されると、人形自身に意思が宿るという。声や音だけで存在を示すのが常で、姿を現すことは少ない。祟るというより訴えかける性質が強く、もとの持ち主のもとへ戻され、寺で改めて弔われるまで、怪異が収まることはないとされる。