婿の全身を舐め尽くす阿波の奇女

嘗女

見初められて婿に入った夜、灯りが落ちる。娘の唇が触れたと思う間もなく、頭から爪先まで――猫のようにざらつく舌が這い回る。逃げ出した若者だけが、その名を語り継いだ。

嘗女 figure art

Danger and Rarity

D
戦闘力

直接人を害する力は伝えられていない。

D
敵対性

人への害意はなく、時に福さえもたらす。

S
稀少性

ただ一体、一度きりの怪異として語られる。

Overview

阿波国(現徳島県)の富豪の娘をめぐる奇譚に登場する女性。婿に迎えた男の全身を隅々まで舐め回す奇癖を持ち、その舌は猫のようにざらざらしていたという。享和元年(1801年)刊の絵本読本『絵本小夜時雨』に「阿州の奇女」として記され、後世の妖怪関連の読み物では「嘗女」と呼ばれるようになった。

Encounter

婿入りした若者だけが、その正体に触れることになる。器量よしとの評判に惹かれて祝言をあげ、灯りを落とした閨に二人きりとなった夜、娘は若者の頭から足先まで、いきなり全身を舐め始めたという。

Lore

この奇行の伝承は、享和元年(1801年)刊の絵本読本『絵本小夜時雨』(速水春暁斎作)五之目録に「阿州の奇女」として記され、原典では富豪の娘は「猫娘」の名で語られる。同種の「なめ女」の名は寛政5年(1793年)刊の黄表紙『古今化物評判』にも見え、当時すでに知られていたとうかがえる。

Traits

昼間は評判どおりの器量よしの娘そのもので、怪しい素振りは見せない。ただし婿を迎えた夜だけ本性を現し、髪の生え際から爪先まで余さず舐め尽くす。舌の表面は猫のように無数のざらつきを持ち、舐められた肌には冷え冷えとした違和感だけが残るという。

嘗女 cover image