老馬の祟りに憑かれた長者
塩の長司
馬肉を漬けては食らい、また漬けては食らう。舐め尽くした恩を、老いた一頭の霊が腹の底から取り立てにきた。
Overview
加賀国小塩の浦(現・石川県)の長者・塩の長司をめぐる馬憑きの一例。長年にわたり死んだ馬の肉を塩漬け・味噌漬けにして食べていた長司が、老いて働けなくなった馬まで殺して食したことで、その霊に取り憑かれ命を落としたと伝わる。
Encounter
馬を殺したその日の夜、長司の夢の中に老馬が現れて喉に食いついたのを境に、以後は同じ時刻になるたびに老馬の霊が口から入り込み、腹の中を暴れ回っては出ていくという発作に見舞われるようになったという。
Lore
この話は天保12年(1841年)刊行の奇談集『絵本百物語(桃山人夜話)』に収められた一話で、生前に虐げた馬の祟りを説く馬憑きという怪異の典型例とされる。医術や祈祷も験なく、長司はおよそ百日の苦しみの末に息絶えたと結ばれている。
Traits
取り憑いた老馬の霊は姿を見せることも言葉を発することもなく、ただ体内で暴れて激痛と衰弱をもたらす。日々同じ時刻に発作を繰り返す執拗さを持ち、最期には憑かれた者の体つきまで、荷を負う馬さながらの格好に変えてしまうという。