病床の闇に糸を這わせる吸血の蜘蛛

大蜘蛛

「蜘蛛が来る」——うわ言だと笑った母もやがて、同じ闇に糸の光る音を聞いた。信濃の夜は、病人の血をひと筋も余さず吸い尽くすまで明けない。

大蜘蛛 figure art

Danger and Rarity

A
戦闘力

人の命を奪う明確な攻撃手段を持つ。

B
敵対性

縄張りや禁忌に触れた者を積極的に襲う。

S
稀少性

ただ一体、一度きりの怪異として語られる。

Overview

病床の人間を糸で縛り血を吸う巨大な蜘蛛。母親の通力で姿が露見し、村人によって退治された。

Encounter

信濃国下水内郡飯山(現・長野県飯山市)の農家で、床に伏せった息子が夜ごと「蜘蛛が来る」とうなされたのが、この怪異との出会いだったという。健やかな者の目にはその姿は映らず、家族が異変に気づくのは、病人が糸に搦め捕られ血の気を失っていく様子だけだった。

Lore

天保年間に成立した地誌『信濃奇勝録』に記された話で、母の一念によって初めて姿が見え、近隣の者が武器を手に駆けつけて退治したと伝える。『土蜘蛛草子』などに見える土蜘蛛の異称としての「大蜘蛛」とは別に、この飯山の話は特定の家に起きた一度限りの怪異として書き残された点で異彩を放つ。

Traits

見えざる糸で獲物を幾重にも縛り、身動きを封じたところへゆっくりと血を啜る。姿は普段だれの目にも映らず、正体を暴くには強い祈りや肉親の一念など、尋常でない力が要る。傷つけられれば正体を現し巨躯をあらわにするが、それまでは病の影に紛れて誰にも気取られない。

大蜘蛛 cover image