枚岡の油を盗んだ老婆の火の玉
姥火
姥ヶ火 / うばがび / 姥が火
雨夜の闇に、赤い火がひとつ。ふわりと肩をかすめて過ぎていく。「油さし」と唱えれば消えるが、黙って見送った者は、三年の後を知らない。
Overview
姥火は、河内国の平岡(現在の大阪府東大阪市)や丹波の地に伝わる怪火。神社の灯油を盗んだ老婆が、死後にその火の玉と化したものとされる。夜ごと一尺ほどの火となって闇を漂い、近くで見ると鶏に似た鳥の姿であったとも語り継がれてきた。
Encounter
雨の降る夜、社の杜や田の畦道の上を、赤い火の玉がふわりと漂って現れる。人のいる方へゆるやかに近づき、すっと傍らを過ぎていく。灯明の絶えた暗がりを行く者ほど狙われやすく、火はどこからともなく湧いて、また闇へ溶けるように消える。
Lore
平岡神社の灯油を盗んだ老女が、その報いで死後に怪火となったと伝わる。罪を恥じて池に身を投げ、社に残る「姥ヶ池」の名の由来になったともいう。井原西鶴『西鶴諸国ばなし』や菊岡沾涼『諸国里人談』に記され、鳥山石燕も「姥が火」の名で絵に残している。
Traits
一尺ほどの火の玉となって宙を飛び、その火が人の肩をかすめると、かすめられた者は三年のうちに命を落とすという。ただし「油さし」と声をかければ、火はふっと掻き消える。盗んだ灯油への執着が、燃える亡執となって夜ごと空をさまよい続けている。