人を食い、福も授ける山の老女
山姥
山母 / 山姫 / 山女郎
日の暮れた峠で宿を乞う老婆に、餅を焼いてもらった夜のことは忘れない。優しかった。だが牛方が荷を惜しんだ途端、囲炉裏の火が老婆の目に映って、山が牙を剥いた。食うか、富ませるか。山姥のどちらの顔に出会うかは、あなたの心根ひとつにかかっている。
Overview
深山にすむ。人里に下りて買い物をする際、富を授ける善い面もある。坂田金時を育てた伝説が有名。
Encounter
峠道や山越えの一本道で、牛方や馬方、小間物売りといった旅の商人がふと行き会う。日暮れに『泊めてくれ』と宿を乞い、囲炉裏端で餅をふるまう気のいい老婆に見えても、油断はできない。ひとたび機嫌を損ねれば本性を現し、背を向けた隙に喰らいつこうとする。
Lore
『牛方山姥』では牛の荷を狙って旅人を執拗に追い、『食わず女房』では美しい嫁に化けて正体を露わす――人を喰らう鬼女として語られる一方、宿を貸せば富をもたらす福の神ともされた。足柄山で源頼光と会い、竜との子・坂田金時を産み育てたと『今昔物語集』は伝える。
Traits
洗い髪で美声を放つ女、眉目秀麗な二十歳ほどの娘、髪の長い一つ目など、その姿は土地ごとに大きく違う。歳の暮れの決まった日を『洗濯日』と呼んで必ず雨を降らせ、家に憑けばみるみる富ませもする。恐ろしさと恵みが背中合わせなのが、この老女の底知れぬところだ。