水車の陰に立つ、精気を奪う美女
川姫
美しい、と思った刹那にすべては決している。水車の軋みにまぎれた吐息、伏せた目のむこうで裾が濡れてゆく。年寄りが袖を引いたなら、何も見なかったふりをして俯くがいい。
Overview
川姫は高知・福岡・大分など西日本の水辺に現れる女の妖怪。若く美しい姿で人前に立ち、見た者が心を動かすとその精気を吸い取ってしまう。福岡県築上郡では水車小屋の陰に現れるとされ、大分では水面を飛ぶように歩き橋の上に立つ美女として語られる。
Encounter
現れるのは、水車小屋や川辺に若い男たちが集うひととき。談笑のさなか、いつのまにか水車の陰に見知らぬ美女がひっそりと立っている。目を奪われて心を寄せれば、そのまま精気を抜かれてしまう。難を避けるには、事情を知る年寄りの合図で一同が下を向き、息を殺してやり過ごすほかない。
Lore
西日本の川筋には、若い男の精気を奪う女妖怪の話が点在する。高知県高岡郡では雨夜に糸枠を巻く美女が現れて男に斬られ、大分県中津地方では水面を飛ぶように歩き、水中から橋の上へ飛び上がる美女として語られる。讃岐の琴平には、堤が切れそうになると人のように泣いて洪水を知らせる「川女郎」も伝わり、川姫と併称されることがある。
Traits
若く美しい女の姿をとり、水車小屋の陰や川辺、橋のたもとなど水気の多い場所に音もなく現れる。見た者の心をとらえ、想いを寄せた瞬間にその精気を吸い尽くす。刃を向けても笑みを返すのみで動じないとも、水面を飛ぶように移動するともいう。息を殺して目を伏せる者にだけは、手を出せない。