詫び証文を残した中津の川の主
川者
カワモノ
「向後、人を煩わせ申さず、女には触れ申さず」——川の主が残した証文には、天明六年の墨が今も乾いている。
Overview
大分県中津の川に棲むとされた河童の類。かつて人に取り憑いて病をもたらしたが、法力ある僧に屈して改心し、以後は害をなさぬと誓う詫び証文を残したと伝わる。自性寺の河童「賢引太郎」の伝説として知られる。
Encounter
新魚町のあたりの水辺に潜み、小僧や女に取り憑いては病を起こしたという。憑かれた者は、法者と呼ばれる祈祷の僧が御幣で身を撫でて祓い、憑いたものを焼くことで、ようやく病から解き放たれたと伝えられる。
Lore
自性寺の十三世・海門和尚が、人々を悩ませていたこの怪を法力で改心させたと伝わる。川の主は寺へ法華経を納めること、以後は中津の人を煩わさず、女に触れぬことを誓い、詫び証文を差し出した。証文には「天明六年六月十五日 ケンヒキ太郎」とある。
Traits
水の底から人に祟りをなす一方で、人語を解し証文をしたためるだけの知恵を持つ。法華経を尊び、験ある僧の前では素直に非を認める。女を好むとされ、詫び証文でわざわざ女に触れぬと誓うほどであった。