斬られた罪人の亡魂が化した、縛られた形の虫
常元虫
後ろ手に縛られた形のまま、虫は毎年土からわく。斬られてなお、常元はこの世へ這い出ようとしている。
Overview
近江・別保の常元屋敷に伝わる妖怪。盗みを重ねた末に斬罪となった僧・常元の亡魂が化したとされ、亡骸を埋めた地から毎年おびただしくわいたという。人が後ろ手に縛られたような、奇怪な形をしていた。
Encounter
俗に常元屋敷とよばれる、西念寺(現・滋賀県大津市別保)の西北にあった空き地。家を建てると災いが起こるとされて、誰も住もうとしなかった。その塚の上に立つ柿の木の下からは、夏になると怪しげな虫がおびただしく生じたという。
Lore
天正のころ、この地に南蛇井源太左衛門という強盗が住み、諸国で盗みと殺しを重ねた。老いて悔い改めて僧となり常元と名乗ったが、慶長の年、過去の罪により捕らえられて斬罪に処され、亡骸は塚の上の柿の木の下に埋められた。世人はわいた虫を常元の亡魂とみて、常元虫とよんだ。
Traits
この虫は、やがて蝶に化してことごとく飛び去る。だが翌年もまた同じ木から必ず生じ、いくら祓おうと絶やすことはできなかった。魂が虫や木に宿るのはごく自然なことと考えられ、処刑されてなお消えぬ常元の執念が、毎年この虫となってよみがえるものとされた。