いざなぎ流の太夫が放つ、人を蝕む呪詛の神
式王子
式王子(しきおうじ)
身に覚えのない病に臥せり、太夫に占ってもらえば「式を打たれている」と告げられる。ならば送り返すまで――谷あいの村では、見えない神を投げ合う呪いの合戦が、静かに続いていた。
Overview
「いざなぎ流」の太夫(祈祷師)が使役する呪詛神。紙人形や動物に憑依させ、相手を病に落とす。高知県物部村に伝わり、中世の陰陽師が使う式神とほぼ同じものとされる。
Encounter
土佐の山あい、高知県香美市(旧・物部村)に根づく民俗宗教『いざなぎ流』の祈祷の場に、その力は呼び出される。土地争いや根深い遺恨を抱えた者が太夫のもとを訪ねて呪詛を望むと、太夫は式王子を仕立てて、狙う相手のもとへ送り出す。送りつけられた側は、思い当たる理由もないまま病に倒れ、突然の不幸に見舞われる。
Lore
太夫と呼ばれる祈祷師が式王子という霊を使役し、因縁調伏や呪詛を行うとされる。原因の知れぬ災いに見舞われた者が太夫に占ってもらうと、誰かに式を打たれていると告げられ、その相手が判明することもある。そうしたとき、送られた式王子をそのまま相手へ送り返す『呪詛返し』の法が用いられた。呪詛返しは合戦にまで発展することがあり、応酬のたびに式王子の威力は倍増して、当人だけでなく親類縁者にまで害が及ぶと恐れられた。
Traits
ふだんは定まった姿を持たない霊で、太夫が紙の人形や動物に憑依させて操る。取り憑いた相手をじわじわと蝕み、その健康を奪っていく。動物の怨念を用いる蠱毒や犬神とも通じ、中世の陰陽師が都で使役した式神と、ほぼ同じものといえる。物部の太夫たちは、この見えない神を手足のように操る術に長けていた。