輪の中央に神が降りる、子供らの神懸かり遊び
御釜踊り
青山、葉山、羽黒の権現──囃す声が渦を巻き、輪の真ん中でひとりの子が、ふらりと立ち上がる。もう、その子ではない何かが踊っている。
Overview
明治維新以前、子供たちの間で流行った遊びの一種。一人を中央に座らせ、周りの子が手をつないで輪をつくり、御釜の神を呼ぶ文句を唱えながら踊る。繰り返すうち中央の子が踊り上がると、御釜の神が憑いたとされた。
Encounter
遊びは戸外の広場などで、子供が数人集まれば始まった。中央に一人を座らせ、それを取り囲むように手をつないで輪をつくる。一斉に「青山、葉山、羽黒の権現、ならびに豊川大明神、後先いわずに、中は窪んだ御釜の神様」と大声で唱え、手を振って踊り続けると、やがて中央の子が立ち上がって踊り出す。
Lore
年経た子供の遊戯が、いつしか神を招く呪法の形をとったものとされる。羽黒の権現や豊川大明神といった実在の神仏の名を連ねて呼びかけ、中央の子に「御釜の神」が乗り移るのを待つ。招魂・神懸かりの民間信仰が、遊びの体裁をとって伝わったと考えられている。
Traits
輪の唱えが繰り返されるうち、中央に座った子が我を忘れたように踊り上がる。これを神の憑依とみなした。西洋の舞踏病では踊り手が自我を失うまで何時間も踊り続け、痙攣を起こし口から泡を吹いて気絶するというが、御釜踊りもこれに近い、自己を喪失した神懸かりの状態をもたらすものとされる。