疫病と災厄をまき散らす荒ぶる鬼
悪鬼
壁を破って躍り込む影に、経を唱える声だけが立ち向かう。
Overview
病気や災厄をまき散らすとされる鬼の総称。とりわけ流行病は悪鬼の仕業と考えられ、平安京などでは疫病が起こるたびに悪鬼を追い払う儀式が営まれた。人と見れば襲いかかり、その命を奪う荒々しい怪として語られる。
Encounter
現れるのは、旅の途中で道に迷い、荒れた寺に一夜の宿を借りたような時である。人が寝静まった真夜中、堂の壁を打ち破って躍り込み、眠る者に不意に襲いかかる。都に流行病が満ちる折には、目に見えぬ災いとして町々に忍び入るともいわれた。
Lore
平安中期の法華経霊験説話集『大日本国法華経験記』に、但馬(現・兵庫県)の小寺での話が載る。道に迷った老僧と若僧が一夜を明かす夜半、悪鬼が押し入って老僧を噛み殺したが、若僧は一心に法華経を唱えて仏像にすがり、毘沙門天の功徳により危うく命をとりとめたと伝える。
Traits
腕力は凄まじく、堅い壁をも素手で打ち破り、人の喉笛を一噛みで断つ。疫病を運ぶ疫鬼としての性格も強く、対処には読経や退散の儀式が頼りとされた。信心の薄い隙をつくが、法華経の読誦や毘沙門天の加護の前には力を失うという。