杉の梢から降り、ひとしきり笑ってまた吸われて消える生首の群れ
東北の釣瓶落とし
見上げるな、と言われても見上げてしまう。落ちてくる首の、どれもが楽しげに笑っていて、そのくせ地には一つも届かないのだ。
Overview
宮城の七ヶ宿街道に伝わる怪異。頭上の杉の梢から男女の大きな生首がいくつも落ちてきて、ゲラゲラと大笑いし、すぐに引き上げられるように梢へ消える。同じ名を持つ西日本の釣瓶落としの、東北ならではの一変種とされる。
Encounter
白石の城下から水沢へ抜ける七ヶ宿街道の、杉並木の下でのこと。暮れがた、頭上でざわめきを感じて見上げると、梢から大きな首が次々に落ちかかる。地に届く手前で笑い声を上げ、糸でたぐられるように梢へ戻っていく。
Lore
宮城の七ヶ宿街道——白石の城下から出羽・水沢へ抜ける道筋——に伝わる怪異。杉の大木の梢から男女の大きな生首がいくつも落ちかかり、地に届く手前でゲラゲラと笑って、糸で引き上げられるように梢へ消えるという。西日本で広く語られる「釣瓶落とし」——木の上から釣瓶のように何かが落ちてくる怪——の系譜に連なりながら、落ちてくるのが生首の群れである点に東北ならではの色がある。
Traits
杉の巨木を棲み処とし、その下を通る者の頭上に、男女入り混じった生首を釣瓶のように落としかける。刃も牙も向けず、ただ声を立てて大笑いすると、見えない糸に引かれて梢へ吸い上げられ、跡形もなく消える。害を加えるより、道行く者の肝を冷やすことを常とする。