眠る間に枕を返す、寝床の悪戯者
枕返し
眠りに落ちるとき、たしかに枕は頭の下にあった。なのに目を開ければ、それは足のほうにある。誰が、いつ、どうやって。問うても答えはなく、ただ小さな足跡が、畳の上にぽつり、ぽつりと残るばかり。
Overview
寝ている人の枕を夜のうちにひっくり返す、あるいは頭と足の向きを入れ替えるという妖怪。鳥山石燕『画図百鬼夜行』には小さな仁王のような姿で描かれ、子供や坊主の姿とも伝わる。その正体は座敷童子の悪戯とも、この世を去った者の霊のしわざともいわれる。
Encounter
遭うのは、夜ふけの寝床の中。ぐっすり眠っていたはずが、目覚めると枕が足元にあり、寝ていた向きがすっかり入れ替わっている。旧家では、床に就いた人が体を押しつけられ、畳を持ち上げられ、翌朝には小さな足跡だけが残されていた、とも語られる。
Lore
古くは、夢を見る間は魂が体から抜け出ており、その隙に枕を返されると魂が肉体へ戻れなくなると信じられた。枕は眠る者と異界とを結ぶ特別な道具とも考えられ、それをひそかに動かすものが枕返しとして畏れられた。北枕を忌むなど、寝る向きにまつわる禁忌ともつながっている。
Traits
音もなく寝所へ入り込み、眠る者に気づかれぬまま枕を返してのける。害を加えるというより、寝床を乱し、人を戸惑わせるのを常とする。地方によって正体は移ろい、群馬では猫が化けた火車、静岡では身の丈三尺ほどの枕小僧のしわざともされる。