無欲な家に舞い込む金の精
江戸の金霊
金霊(かねだま) / 金玉(かねだま) / 金魂
追えば逃げ、忘れたころに舞い込む——金の気は、金を求めぬ者の懐をこそ選ぶ。床の間の金色の塊がほのかに輝くうち、その家の蔵は尽きることを知らない。だが欲がひとたび顔を出せば、光はふっと消えている。
Overview
無欲な人の前に現れる富をもたらす精。金玉(隕石)として床の間に飾ると栄える。
Encounter
欲を離れて堅実に暮らす家にこそ、ある夜ふいに舞い込むという。土蔵の窓から大判小判があふれ出るように、あるいは手毬ほどの光る玉となって飛び込んでくる。求めて招けるものではなく、金銀の気を見分ける無欲の目にだけ、その訪れは映るとされる。
Lore
鳥山石燕は『今昔画図続百鬼』で「金霊は金気なり」と記し、無欲な者こそ金銀の気を識るという杜甫の句と、富貴は天の定めとする論語の言葉を添えた。山東京伝の『怪談摸摸夢字彙』では金玉の名で、正直者の家に飛び込んで富ませ、人が欲に溺れると去るものとされる。その光る玉を傷つければ、その家は滅ぶとも語られた。
Traits
金そのものの気が凝って生じた精であり、善行を積む家に引き寄せられて富を呼び、蔵を金銀で満たす。だが福を鼻にかけ欲深くなった主のもとには長く留まらず、潮が引くように去って家運もまた傾く。床の間に据えられた金色の塊は、この精が居着いた証とされ、大切に扱う限り家を栄えさせ続けるという。