灯明の油を盗んだ僧の亡魂が、火となって夜空を渡る。
油坊
油ひと掬いの罪は軽い。だが火となって夜ごと燃える身には、もう掬うべき油も、逃げ込むべき闇もない。――炎の中で、坊主どもは今も念仏を唱えている。
Overview
比叡山の灯油を盗んだ僧の執念が化したとされる怪火。滋賀や京都に語られる油盗みの怪火の一つで、晩春から夏の夜、山あいの闇をふわりと横切って飛ぶという。
Encounter
滋賀県野洲郡欲賀村(現・守山市)のあたりで、晩春から夏の夜に現れたと伝わる。比叡山の西麓でも同じような怪火が飛ぶとされ、田や山際の暗がりを、音もなく横切っていく。
Lore
油を盗んだ罪は死後も晴れず、火となってさまようという仏罰の物語。『諸国里人談』は比叡山西麓の怪火を、『古今百物語評判』は延暦寺で盗油して没落した者の霊が火となり、火中に怒りの坊主の首が見えたと記す。
Traits
夜空を飛ぶ怪火で、近づくと炎の中に無数の僧形が浮かび上がる。人へ直に手を出すことはなく、盗みの業を背負ったまま燃え続ける亡魂とされる。油にまつわる同類の怪火とともに、罪の報いを照らすように光る。