凪の夜、海面を破って立つ黒い巨人

海坊主

凪いだ夜ほど気をつけよ。油のように静まった海が、ぬらりと盛り上がったなら――それはもう、真っ黒な坊主の背中だ。声をあげるな。振り返るな。煙草に火を点けて、ただ黙って吹かしていろ。

海坊主 figure art

Danger and Rarity

A
戦闘力

人の命を奪う明確な攻撃手段を持つ。

B
敵対性

縄張りや禁忌に触れた者を積極的に襲う。

C
稀少性

広く知られるが、日常で出遭うことはまれ。

Overview

海坊主は、夜の海に突如あらわれる黒く巨大な坊主頭の妖怪。数メートルから数十メートルにも及ぶ体が凪いだ海面を破って立ち上がり、行く手の船を握りつぶし、あるいは沈めるという。全国の沿岸に広く語られる、代表的な海の怪異である。

Encounter

波の静まった穏やかな夜、沖を進む船のかたわらで海面が突然もり上がって出現する。単体のこともあれば群れをなすこともあり、嵐の前触れとして立ち現れる場合もある。うっかり声をかけたり、じっと見つめ返したりすると、たちまち襲いかかって船を転覆させる。

Lore

近世の随筆『斎諧俗談』『甲子夜話』などに多くの事例が記録される。地域差は大きく、愛媛では盲目の僧に化けて現れ、長野には海ではなく川に出る淡水型も語られた。その正体は溺死者の亡霊とも言われ、寺島良安『和漢三才図会』は人面のウミガメをこれに擬している。

Traits

海面から巨体を半ばのぞかせ、船縁に取りついて水を注ぎ込み、沈めにかかる。弱点は煙とされ、煙草をくゆらせて吹きかければ退散するという。「柄杓を貸せ」と迫ってきたときは、底を抜いた柄杓を渡せば、いくら汲もうと水は溜まらず、船を守ることができる。

海坊主 cover image