山に連なる狸の弔いの灯
狸火
山の端に、また一つ灯がふえた。数えるな――向こうも、こちらを数えているのだから。
Overview
山頂に多数現れ、自在に遊行する火。小便をかけると消える。
Encounter
徳島や高知の山あいで、夜、山の上に提灯のような火がいくつも点り、行列をなして自在に移り動いていくのが見えることがある。青白い光の連なりは葬式の灯にも似て、麓へ下りたかと思えば山へ引き返す。三好郡では、狸を殺して持ち帰った家の裏手に、この火の列が現れたと語り継がれた。
Lore
大正二年(1913年)の秋、三好郡山城谷村で山中から提灯火の行列が現れ、ある家の裏まで下りて山へ引き返し消えた。ちょうどその家の者が二匹の狸を殺して持ち帰った時刻と重なり、殺された仲間を送る弔いの列と受け取られた。寛保年間の『諸国里人談』には、摂津の鰻畷で狸火が人の姿をとり、牛を引いて現れた話も見える。
Traits
狸火は一つではなく、山の端に無数に灯って行列をなし、意のままに山を上り下りする。葬列の提灯にも、牛を引く人の携える火にも化け、事情を知らぬ者は思わず挨拶を交わすほど真に迫る。追えば遠ざかり、近づけば散じてつかめない。小便をかけると、あっけなく消えてしまうという。