富士を追われ、黒部で人を喰らった老猫
猫又山
富士に忌まれ、血の匂いだけを連れて黒部へ下りてきた。狩人が束になっても、その双眸に射すくめられれば足は動かない。討たれたのではない――猫又は、飽きて山を去っただけなのだ。
Overview
富士山から追放された老猫が黒部に住み着き、人を喰ったという。その山は現在「猫又山」と呼ばれている。
Encounter
越中黒部峡谷の山中に現れ、里へ下りては盛んに人を殺した。困り果てた村人が代官へ訴え、多数の狩人が山狩りの末にようやくこれを見つけ出す。だが両眼を爛と光らせ、寄れば殺すという凄まじい形相に、狩人らは立ちすくんで手を出せなかったという。
Lore
もとは富士権現に仕えた老猫で、源頼朝の富士の巻狩りで駆り出された際に軍兵を喰い殺して逃げた。血に汚れた身を権現に忌まれて富士を追放され、黒部へ流れ着いたと語られる。狩人を尻目に山を去ってのち、里は平穏を取り戻し、その山は猫又山と呼ばれるようになった。
Traits
軍兵を幾人も喰い殺すほどの膂力と俊敏さを備え、獲物を四方から囲む巻狩りをもかいくぐって逃げおおせる。憤怒に燃える両眼を光らせて睨めば、腕利きの狩人さえ足がすくんで動けない。人里に居ついては次々と人を襲うが、追われれば執着なく、いずこへともなく姿を消す。