うねる古布巾の付喪神
白容裔
しろうねり / 白溶裔 / 白うねり
げに、掃除に使われた身の果てが、これである。饐えた匂いを引きずって夜を飛び、選りにも選って人の口もとへ舞い降りる。払っても払っても、じっとりと頬に貼りついて離れない——きれい好きは、その報いをこんな形で受け取るのかもしれない。
Overview
古い雑巾が発酵して妖怪化したもの。ひどい悪臭を放ち、夜中に飛行して人の口にまとわりつく。
Encounter
台所の隅や、忘れられた水屋のあたり——湿って饐えた布のたまる場所に湧く。年を経て打ち捨てられた布巾や雑巾ほど化けやすく、化ければぼろ布が竜のように長くうねって、ぬらりと宙をのたうつように漂う。掃除に使い古した一枚が、いつしか主を得ているのである。
Lore
鳥山石燕は画集『百器徒然袋』に、これを「古きふきんの化けたるもの」として描いた。名は『徒然草』の変わり者「しろうるり」をもじって当てたもので、風になびくさまを表す「容裔」の字を添えている。人を襲うという件は後世の書き手が付け足したもので、石燕自身は姿を描くにとどめ、害については何も記していない。
Traits
後の世の解説では、夜ごと飛び回っては人の口や顔にべたりとまとわりつき、全身から放つ強烈な悪臭と、体を覆う粘つく汚れとで相手を気絶させるという。もとは掃除に使われた布であればこそ、人の口もとという最も清くありたい一点をわざわざ狙うのが、いかにも意地の悪いところである。