衣を打ち砧の音を奏でる化け狸
絹狸
トントン、と夜通し衣を打つ音。近づけば止み、離れれば、また鳴りだす。
Overview
八丈島産の織物を着た姿。布を柔らかくするために叩く砧の音をさせる。美しい娘に化けることもある。
Encounter
人里離れた夜更け、どこからともなくトントンと衣を打つ砧の音だけが聞こえてくる。音のする方へ足を運んでも姿はどこにもなく、ときには道端に見目麗しい娘となって旅人の前に立つ。だが正体を悟られる前に、狸はふっと気配を消してしまうという。
Lore
江戸中期の絵師・鳥山石燕が画集『百器徒然袋』に描き、「衣うつなる玉川の玉にゑんある八丈のきぬ狸」と賛を添えた。妖怪探訪家の村上健司は、布を打つ道具の砧(きぬた)と「きぬ・たぬき」の語呂合わせから生まれた石燕の創作と説く。名には絹の名産地・八丈島も掛けられている。
Traits
名産の黄八丈を身にまとい、狸ならば腹鼓を打つところを、この一匹だけは衣を打って砧の音を響かせる。夜通し布を叩くその音で人を惑わすが、警戒心は人一倍で、けっして人前に本来の姿をさらすことはないという。