笑いを求める、顔だけの妖怪
五体面
笑ってくれ、と踊る顔。笑えば拗ね、笑わねば怒る。屋敷の主人は今夜も、酒と愛想笑いで機嫌を取り結ぶ。何を求めているのか、本人にもわかっていないのかもしれない。
概要
五体面は、頭部に直接両手両足が生えた一頭身の姿をした妖怪。江戸期の『百鬼夜行絵巻』に、名前と絵だけを残して詞書のない姿で描かれ、由来も性質もはっきりしない。屋敷に現れて客に芸を見せる、という後世の解釈で広く知られるようになった存在である。
出現
大名や小名、貴族などの屋敷の宴席に、招かれてもいないのに現れる。座敷の隅にふわりと座り、蟹股の足で横に這うようにして進み出て、居合わせた客の前でおどけた芸を披露しはじめる。気づけば誰もその出所を知らないまま、座に紛れ込んでいる。
伝承
『百鬼夜行絵巻』は写本ごとに絵柄が異なり、同時代の妖怪画帖『ばけ物つくし帖』には同じ姿が「下国の人」の名で残るなど、複数の呼称が並び立つ。その独特な歩き方から、慣用句「蟹の横這い」と「体面」を掛けた言葉遊びの妖怪だとする解釈もある。
特徴
客を笑わせようと腹踊りまがいの芸を見せるが、笑われなければ機嫌を損ねて暴れ出す。逆に笑わせることに成功しても、なぜか自尊心が満たされず腹を立て、座敷を引っかき回したあげく、その場に寝入ってしまう。満足を知らない、扱いにくい客人である。