囲炉裏に棲む、五徳を被った猫又

五徳猫

かちり、と五徳が鳴る。誰もいないはずの囲炉裏端で、炭が独りでに息を吹き返す。飼い主が起き出す頃には、猫は素知らぬ顔で丸くなっている。今日も家の中は、朝から暖かい。

五徳猫の立ち絵

危険度・希少度

D
戦闘力

直接人を害する力は伝えられていない。

D
敵対性

人への害意はなく、時に福さえもたらす。

C
稀少性

広く知られるが、日常で出遭うことはまれ。

概要

五徳猫は、頭に囲炉裏の五徳を冠のように被り、二股の尾を持つ猫の妖怪。鳥山石燕の妖怪画集『百器徒然袋』に創作され、火吹き竹を手に自ら火を起こす姿で描かれる。名は、火起こし道具の五徳と、ある学者の渾名を掛けた言葉遊びに由来する。

出現

人が寝静まった夜、灰の冷えた囲炉裏端にふと気配が兆す。目を凝らせば、頭に五徳を載せた猫が丸くうずくまり、火吹き竹をくわえて灰の中の熾火に息を吹きかけている。誰も火をおこした覚えがないのに、朝にはそこに赤々と炭が熾きていることがある。

伝承

鳥山石燕『百器徒然袋』(天明4年・1784年刊)に見える創作の妖怪で、『徒然草』に語られる学者・信濃前司行長が舞の作法を二つ忘れて「五徳の冠者」と渾名された故事を、火起こし道具の五徳にかけている。図像は室町期の百鬼夜行絵巻に見える、五徳を被った獣形の妖怪を猫に翻案したものとされる。

特徴

二股に裂けた尾を持ち、年経た猫又の性質を宿す。誰に命じられるでもなく火の番をし、消えかけた炭に息を吹きかけて熾す。人を害する話は伝わらず、むしろ寒い夜に火を絶やさぬ、どこか律儀な働き者として振る舞う。

五徳猫のカバー画像
楽府の御論議の番に召されて、七徳の舞を二つ忘れたりければ、五徳の冠者と異名を附きにけるを

徒然草