死の間際に体を離れる、青白い光
人魂(ひとだま)
夜道の先、低く漂う青白い光。追えば逃げ、目をそらせば消える。誰かの最後の吐息が、まだそこに残っている。
概要
人魂は、人が死ぬ間際やその直後に体を離れて宙を漂うとされる光る玉。青白く長い尾を引き、地を這うように低く飛ぶその姿は、奈良時代の和歌にすでに詠まれるほど古くから知られてきた。魂そのものを目にする、数少ない怪異の一つである。
出現
死期の迫った病人の枕辺や、人が息を引き取った家の屋根の上に現れ、寺や墓地の方角へ夜道を漂っていく。地域によっては生まれてくる子の兆しとして、あるいは死の二、三日前に体を抜け出す前触れとして、様々に語られている。
伝承
『万葉集』には「人魂のさ青なる君」と詠んだ歌が残り、平安以前から青い魂の飛翔が知られていた。江戸期には鳥山石燕が『今昔画図続百鬼』に図版として描き、沖縄の「タマガイ」、千葉の「タマセ」など地方ごとに呼び名や言い伝えを変えて伝わる。
特徴
老いて病み衰えた者の魂は弱々しくゆっくり漂い、事故や急な病で命を落とした若者の魂は勢いよく飛ぶという。宵のうちは滑らかに飛ぶが、夜が更けるにつれて揺らめくように飛び方を変えるとも語られ、死に方の違いがそのまま光の勢いに表れる。