口外を許さぬ、塚に潜む怪女
五つ塚の怪女
十年黙っていれば、忘れられると思ったか。だが塚は覚えている。囲炉裏端で笑い話にした一言が、闇の底からにじり寄ってきた夜を呼び戻す。翌朝、崖の下に転がっていたのは、二度と何も語れない亡骸だけだった。
概要
五つ塚の怪女は、新潟県長岡市(旧岩野村)の信濃川近くに古塚が並ぶ「五つ塚」に伝わる、正体不明の女の怪異。姿を見た者に沈黙を強いるのが特徴で、後にその出来事を口外すると、命を落とす結末が待っているとされる。素性を語る記録はほとんど残っていない。
出現
夜更けに一人でこの塚のそばを通りかかると、一の塚、二の塚をやり過ごした先、三の塚のあたりで、長い髪を振り乱した女の影がふと目に入る。目が合えば怪女はにじり寄り、姿を見たことは誰にも話すなと低く告げて、瞬く間に消え去る。
伝承
この話は、見聞きしたことを口外すれば祟りを受けるという、禁忌説話の型に連なる。怪女自身の素性や由来を語る記述はなく、塚の名と、掟を破った男の末路だけが土地の言い伝えとして残っている。
特徴
普段は塚のそばにひっそりと潜み、目撃されたことそのものより、その事実を他人に語られることを何より嫌う。約束を違えた者には二度と姿を見せず、ただ静かに命を奪う。祟りの気配も前触れもなく、犠牲者は決まって、忘れた頃に変わり果てた姿で見つかる。