嘴を持ち、天翔ける小天狗

烏天狗

「こんな所で用を足してはいけない」。黒い顔の大男はそう言って、子の目を掌でふさいだ。次に瞼を開けたとき、そこは我が家の裏庭だった。

烏天狗の立ち絵

危険度・希少度

B
戦闘力

条件がそろえば、人の命にも関わる。

C
敵対性

脅かし惑わせはするが、深追いはしない。

C
稀少性

広く知られるが、日常で出遭うことはまれ。

概要

烏天狗は、山伏装束をまとい、烏のような嘴を持つ顔をした天狗である。青天狗・小天狗とも呼ばれ、鼻高の大天狗より格下の眷属とされる。羽で自在に空を飛び、剣術に秀でるといい、鞍馬山の烏天狗は幼い牛若丸に剣を教えたと伝わる。愛媛の石鎚山でも、その仕業とされる神隠しの話が語られてきた。

出現

深山の頂や祠のあたりで、ふと人の前後から気配が消える。愛媛・西条の石鎚山では、親が目を離した隙に子がかき消え、麓の家に戻ると当の子が先に帰り着いていた。子いわく、山頂で真っ黒い顔の大男に「目を瞑っておいで」と言われ、気づけば我が家の裏庭に立っていたという。

伝承

中世の天狗は猛禽のごとき半人半鳥の姿で描かれたが、近世に鼻高の天狗像が主流になると、嘴を持つ古い姿を「烏天狗」と呼び分けるようになったとされる。剣術に長け、鞍馬山では牛若丸に兵法を授けたと語られる。石鎚山を舞台に子を一瞬で家へ送り届けた話は、末広昌雄が民俗誌『あしなか』に寄せた「伊予路の天狗噺」に西条の伝承として記録され、広く知られる。

特徴

翼で風を切り、山から山へ、里から山頂へと一瞬で飛び渡る。神通力に秀で、人を隠したかと思えば無傷で家へ帰すなど、その気まぐれは容易に読めない。剣の術は無双とされ、人にこれを授けることもある。害意をあらわにするより、山の秩序を破る者を戒め、迷う者を導く番人のように振る舞うことが多い。

烏天狗のカバー画像