葬列を襲い、亡骸をさらう猫の妖怪

火車

かしゃ / キャシャ / クシャ

稲光とともに黒雲が墓地へ降り、送り人の松明を吹き消す。人々が身を伏せた一瞬、棺は蓋ごと空へ攫われた。残されたのは焦げた縄と、二筋の尾が宙に描いた弧ばかり。悪しき者の亡骸は、けっして土に還らぬという。

火車の立ち絵

危険度・希少度

B
戦闘力

条件がそろえば、人の命にも関わる。

B
敵対性

縄張りや禁忌に触れた者を積極的に襲う。

C
稀少性

広く知られるが、日常で出遭うことはまれ。

概要

葬式や墓場から死者の亡骸を奪い去るとされる妖怪。生前に悪行を重ねた者の遺骸が特に狙われるという。年を経た猫、すなわち猫又が正体とされ、多くは猫の姿で語られる。地獄の火の車の観念に、猫が死体をさらう怪異譚が習合して生まれた。

出現

現れるのは葬送のとき。棺を送る列や埋葬したばかりの墓地に、暗雲と雷鳴、烈しい風雨をひき連れて舞い降りる。稲光の中から躍り出て牙を剥き、人々の隙をついて棺の蓋をこじ開け、亡骸をつかんで空へ運び去る。全国各地でその襲撃が語り継がれてきた。

伝承

元は仏教でいう地獄の火の車に由来するが、十七世紀末頃、年経た猫が死骸を盗むという怪異譚と結びつき、猫の妖怪として定着した。鳥山石燕『画図百鬼夜行』はその正体を猫又と記す。棺に石や剃刀を仕込む、刃物を置くなど、亡骸を奪われぬための備えが各地に伝わる。

特徴

双つの尾を持つ大猫が火の玉に乗って飛び、人ほどもある体で棺を抱えて去るという。空を駆ける力を持ち、法力ある僧の払子や呪文の前には退く。地方によりキャシャ、クシャとも呼ばれ、遠野から瀬戸内の島まで、その名は姿を変えて伝わっている。

火車のカバー画像