人に憑いて病をもたらす平安の霊

物の怪

もののけ / 物怪

見えぬものが、床に伏す人の胸をそっと押さえている。医師の薬は効かない。効くのは、その名を呼び、恨みをじっと聞いてやることだけだ。

物の怪の立ち絵

危険度・希少度

A
戦闘力

人の命を奪う明確な攻撃手段を持つ。

B
敵対性

縄張りや禁忌に触れた者を積極的に襲う。

C
稀少性

広く知られるが、日常で出遭うことはまれ。

概要

物の怪は、平安時代の人々が信じた、人に取り憑いて病や死をもたらす霊的存在の総称。恨みを抱いて死んだ者の死霊のほか、生きた人間の魂が身体を離れてさまよう生霊も含む。原因の分からぬ病や急死は、しばしばこの物の怪の仕業と考えられた。

出現

発病の床や出産の場など、心身の弱った人のそばに、姿を見せぬまま忍び寄る。取り憑かれた者は高熱に浮かされ、うわ言を口走り、時に人が変わったように苦しむ。験者が加持祈祷を始めると、その正体は憑坐へと移り、初めて恨みの声となって現れる。

伝承

『源氏物語』では、光源氏の愛人・六条御息所の生霊が、嫉妬のあまり葵の上を取り殺したと語られる。生者の魂も身体を抜け出して人を害すると信じられていた。『今昔物語集』や『枕草子』にも、物の怪を憑坐に移して調伏する加持祈祷の場面が描かれている。

特徴

定まった姿を持たず、人の身体の内側に入り込んで、恨みの深さに応じて病・狂乱・死をもたらす。刃も薬も届かないが、験者の加持によって仲立ちの者へ引き出され、名と恨みを語らされたうえで説き伏せられれば、ようやく身を離れて退散する。

物の怪のカバー画像