炉端にひびく屁のばけもの
オッケルイペ
オッケオヤシ / 屁っぴりおばけ / 屁っこき野郎 / 屁っぴりおやじ
独りの晩、炉の奥でポアと音がする。あちらでポア、こちらでもポア。臭い。だがひるむな、こちらも一発返してやれ。真似の音でもかまわない。屁のばけものは、屁に負けて逃げていく。
概要
樺太アイヌに伝わる屁の化け物。オッケオヤシとも呼ばれ、アイヌ語で放屁がすさまじい者を意味する。姿は基本的に見えず、家の炉の中や部屋のあちこちでポアと屁の音を放ち、堪えがたい臭いを立てるが、こちらも屁で応じれば恐れ入って退散するという。
出現
家の中に独りでいるとき、突然囲炉裏の中からポアと音が響く。すると部屋のあちらでもこちらでもポアと際限なく屁が続き、臭くてかなわなくなる。川辺では若者に化けて舟に乗せてくれと頼み、乗り込んでから盛大に放屁して舟を裂くという説話も伝わる。
伝承
アイヌ語学者・知里真志保が編訳した「えぞおばけ列伝」に、へっぴりおばけ、へっぴりおやじの話として収録される。樺太アイヌの日常や説話に登場するとされ、知里は邪気のないおばけと評した。同書は1961年にぷやら新書刊行会より刊行され、後に岩波文庫アイヌ民譚集に収められた。
特徴
炉や室内で連続して屁の音を発し、我慢できない臭いで人を苦しめる。人が屁を返すか、口でポアと音を真似るだけでも退散するため、害意は薄い。川辺では若者に化けて舟に乗り込み、放屁の勢いで舟を船首まで裂いて乗り手を川へ落とす。棒でなぐり殺すと正体は黒狐であった。
こっちでも負けずにポアと放してやれば、恐れ入って退散する。あいにくと臭いのが間に合わぬときは、ポアと口真似するだけでも退散するというから、このおばけ案外に気はやさしいのかもしれぬ。
知里真志保 えぞおばけ列伝