大木から下がる馬の首
さがり
下がり / サガリ
風のない夜に、枝だけがざわめく木がある。見上げてはいけない――そこには胴のない馬の首が下がり、こちらを見て、ゆっくりと口を開ける。ヒン、ヒーン。その声を聞いた者は、家に帰りつく前に熱に倒れるという。
概要
さがりは、岡山県邑久郡や九州各地に伝わる妖怪で、夜道に立つ古い榎や柿の大木から、馬の首だけがぶらりと下がって現れる。風もないのに枝が鳴り、見上げれば首が口を開けて「ヒン、ヒーン」といななく。道中で死んだ馬の霊が木に宿ったものとも伝えられ、出る木も場所も決まっていた。
出現
夜、人けのない旧道を歩いていると、一本の古い大木の枝が、風もないのにざわざわと鳴りだす。ふと見上げた者の頭上で、馬の首だけがぶらりと下がり、口を開けていななく。出るのは決まった木と決まった場所で、その正体を知る村人は、日が暮れるとその大木の下を避けて通ったという。
伝承
南関町では旧道の柿の大木、玉名市では榎に馬の首が下がるとされ、これを見た者は熱病を患うと恐れられた。福岡県には夜道で足を引っかける「馬の足」が下がる場所もあるといい、正体を狸とする異伝も伝わる。これらの伝承は村上健司編著『妖怪事典』にまとめられている。
特徴
榎や柿の古木の枝から馬の首だけを下げ、通りかかった者を見下ろしていななく。姿を現す木と場所は決まっており、道中で死んだ馬の霊が木に囚われて生じたものとも語られる。直接襲いはしないが、熊本の伝承ではこれを目にした者は熱病に倒れるといい、人々に忌み恐れられた。
木から馬の首がぶら下がり、これを目にした者は熱病を患う
村上健司『妖怪事典』