三十年を経て化けた栄螺の妖
さざえ鬼
栄螺鬼 / さざえおに / サザエ鬼
三十年、海の底で殻を閉じていた栄螺が、ある月夜、そっと手足を伸ばして浮かびあがる。海面で踊る白い女に見惚れてはいけない――近づいた男が失うのは、心か、それとも。金玉は、金でしか買い戻せない。
概要
さざえ鬼は、三十年もの長い年月を生き延びたサザエが霊力を得て化けた妖怪。貝殻に目と手足が生え、普段は海中深くに潜むが、月夜の晩には海上に浮かんで踊るという。紀州や志摩の波切には、美女に化けて海賊たちを翻弄した恐ろしい伝承が残る。
出現
月の明るい夜、海面に白い影が浮かび、手足を伸ばして踊るように揺れていれば、それがさざえ鬼である。志摩の波切では、海に溺れる美しい女として現れ、助けた海賊の船に乗り込んだ。男たちが我を忘れて言い寄ったとき、女はその正体を現したという。
伝承
さざえ鬼(栄螺鬼)は、鳥山石燕が天明4年(1784年)刊『百器徒然袋』に描いた妖怪で、石燕は『礼記』の「雀が蛤に、田鼠が鶉に化す」の一節を引き、造化の妙として着想した。紀州・志摩の波切や房総に伝わる物語は後年に整えられたもので、山田野理夫らの創作の影響も指摘される。
特徴
サザエが長い年月を経て手足と目を得たもので、龍にも似るという。海中に潜んで月夜に踊るほか、美女に化けて男に近づき、言い寄る海賊たちの睾丸をことごとく食いちぎった。取り返すには莫大な黄金を積むほかなく、房総では旅の女に化けて宿を借り、家の主人を奪うと恐れられた。
雀海中に入てはまぐりとなり、田鼠化して鶉となる
百器徒然袋