人の心を見透かす山の魔物

さとり

覚 / 覚り / 玃 / おもい / 思い / 山鬼 / サトリのワッパ

深山で斧をふるう男の背に、黒い影がそっと寄る。怖いと思えば、そう言い当てられる。逃げると思えば、先回りされる。心では、決して勝てない。――だが、割れた木が爆ぜて飛ぶその一瞬だけは、誰にも読めなかった。

さとりの立ち絵

危険度・希少度

A
戦闘力

人の命を奪う明確な攻撃手段を持つ。

A
敵対性

人と見れば襲いかかる、強い害意を持つ。

B
稀少性

各地に類話はあるが、遭うには条件がいる。

概要

さとりは、深山に住み、人が心に思うことを何でも見透かして言い当てる魔物。黒く長い毛におおわれた猿のような姿とされる。心を読まれた人間は隙を突かれて食われてしまうが、当人すら予期しない偶然の出来事にだけは対応できず、逃げ去るという。

出現

山中でひとり木を切っていると、いつのまにか黒い獣が現れ、こちらをじっと見ている。「怖い」と思えば「今、怖いと思ったな」、「逃げよう」と思えば「逃げようと思ったな」と、胸の内を残らず言い当てる。取り繕う心も見抜かれ、隙を狙われるが――思いがけない出来事だけは、さとりにも読めない。

伝承

さとりは飛騨・美濃(現・岐阜県)の深山を中心に伝わる妖怪で、山梨では「おもい」、相模では「山鬼」とも呼ばれた。鳥山石燕は安永8年(1779年)刊『今昔画図続百鬼』に「覚」として描き、『和漢三才図会』の玃(やまこ)を図像の元にしたとされる。木片や火花など偶然の一撃で退けられる説話型が各地に分布する。

特徴

相手の思考をそのまま読み取り、口に出して言い当てる。人語を巧みに操り、山で出会った者を追いつめて食おうと狙う。だがその力は意識された思いにしか及ばず、木を割る破片が偶然飛ぶ、火が爆ぜて跳ねるといった、当人も予期せぬ出来事の前ではなす術なく、「思わぬことこそ恐ろしい」と言い残して逃げ去る。

さとりのカバー画像
飛騨美濃の深山に玃あり、山人呼んで覚と名づく

今昔画図続百鬼