料理人を悔い改めさせた鼈の群れ
すっぽんの怨霊
鼈の怨霊 / 亀六泥亀の怪
数百匹の鼈を捌いて、店は繁盛した。だが夜ごと、亀六の夜着の上に、冷たい甲羅が積もっていく。声も出ない。動けない。――いくら商売とはいえ、殺生は罪だ。男は包丁を捨て、頭を丸めた。
概要
すっぽんの怨霊は、新潟の奇談集『北越奇談』に記された怪異。すっぽん料理を家業として栄えた亀六(かめろく)なる男のもとに、殺された数百匹のすっぽんの霊が夜ごと現れ、重なり合って身体を押さえつけた。亀六は殺生の罪を悔い、ついに出家して僧になったという。
出現
夜更け、亀六が眠っていると、ふいに身体が重くなり、水に浸かったような寒気に襲われて目を覚ます。声も出せぬまま手を伸ばすと、指先に冷たいものが触れる――すっぽんだ。数百匹もの鼈が、夜着の上に幾重にも重なっていた。妻が起き出すころには、その姿は跡形もなく消えていた。
伝承
すっぽんの怨霊は、越後の文人・橘崑崙が著し葛飾北斎が挿絵を描いた『北越奇談』(文化8年・1811年序)に載る話で、挿絵には「亀六泥亀の怪を見て僧となる」と題される。殺生への因果応報を説く怪談で、川魚を扱う店が鰻塚などの供養塔を建てて霊を慰める民俗とも通じる。
特徴
殺され食われた数百匹のすっぽんの霊が、夜ごと一つに寄り集まって現れ、眠る者の上に幾重にも重なって身動きを封じる。冷たい甲羅の重みと水底のような寒気で、声も出せぬまま責め苛む。毎夜これを繰り返され、亀六はついに殺生の罪に耐えかねて仏門に入った。
亀六、泥亀の怪を見て僧となる
北越奇談