廃寺の闇をさまよう肉塊
ぬっぺっぽう
ぬっぺふほふ(現代の誤植とする説あり、原典表記は「ぬつへつほふ」) / ぬっぺっぽう
「どなたですか」。問いかけに答える声はない。肉の塊は、ただ振り返りもせず、闇の奥へぼたぼたと歩き去っていく。
概要
廃寺などに現れる目鼻がぼんやりした肉の塊。死者の肉が独り歩きするものともいわれ、死臭がするという。
出現
人の絶えた廃寺に一夜の宿を求めると、夜更けに廊下を歩む物音がする。目を覚まして見れば、顔とも背ともつかぬ肉の塊がぼたぼたと歩いてくる。寺を出て町へ迷い込むこともあり、見る者が驚き逃げ惑う様を、さも満足げに眺めながらあてもなく歩き続ける。
伝承
鳥山石燕『画図百鬼夜行』に「ぬつへつほふ」の名で図が収録されるが、詞書はほとんどなく名と絵のみが伝わる。1781年刊の洒落本『新吾左出放題盲牛』には「目もなく耳も無く」との記述があり、古くは「のっぺらぼう」と同系統の姿として語られたとみられる。廃寺に現れるという設定は近代の紹介書による後付けの色が強い。
特徴
頭と胴の境もあいまいな肉の塊で、目鼻立ちはあってもぼんやりとして定かでない。誰何しても答えることはなく、襲いかかる素振りも見せず、ただ夜道や廊下をぼたぼたと歩き回るのみである。何を求めて歩くのか、その目的は誰も知らない。
ぬっぺっぽうといふ化けもの有り。目もなく耳も無く
新吾左出放題盲牛