死者の声を我が身に降ろす盲目の巫女

イタコ

オガミサマ / オナカマ / ミコサマ / 口寄せ巫女

目に映る世界を早くに閉ざされた者が、代わりに見えぬ者たちの声を聴く。数珠が鳴り、うなり声が言葉になり、遺された者は涙する。それが本人か、老女の記憶か、祈りが結んだ影か――問うても詮ないだろう。ただ、参道に並ぶ黒い衣の巫女は、年々その数を減らしている。

イタコの立ち絵

危険度・希少度

D
戦闘力

直接人を害する力は伝えられていない。

D
敵対性

人への害意はなく、時に福さえもたらす。

A
稀少性

限られた土地でだけ、まれに語られる。

概要

イタコは、東北地方北部で死者の霊を我が身に憑依させ、その言葉を語る口寄せを行う巫女。多くは盲目や弱視の女性で、幼くして師匠に入門し、数年の修行と入巫式を経て一人前となる。青森県恐山の大祭で参道に並ぶ姿がとりわけ知られ、亡き人と語ろうとする人々が全国から訪れる。

出現

恐山の大祭は七月二十日から二十四日。硫黄の匂う霊場の参道に、数珠を握ったイタコが並ぶ。名を告げ、続柄と没年を伝えれば、老女は低くうなり、経文を唱えながら別人の口調へと変わる。やがて語り出すのは、呼び出された者――もう会えぬはずの、亡き人の声である。

伝承

東北北部の津軽・南部に伝わる習俗で、地域によりオガミサマ・オナカマ・ミコサマとも呼ばれる。柳田國男は語源を「斎(イツキ)」に求め、アイヌ語「イタク(語る)」説、板に戒名を記す「板コ」説もある。恐山菩提寺は寺伝で862年に開かれた曹洞宗の霊場だが、口寄せは寺の行事ではなく大祭に集う巫女の習俗である。

特徴

死者の霊を呼ぶ「死に口」、生者の霊を呼ぶ「生き口」、神霊に問う「神口」を使い分ける。幼少期に病で目を失った者が師匠に入門し、経文・呪文・占いを数年かけて習得。卒業試験の入巫式で神憑り状態に至れば独立が許される。津軽・羽後のイタコ習俗は国の選択無形民俗文化財に選ばれている。

イタコのカバー画像