川に人を引き込む猿の河童

エンコウ

猿猴 / えんこ / 河童 / 河太郎 / 淵猿

川面に猿めいた影が揺れる。相撲を挑まれ、うっかり手を取れば――もう水の底だ。キュウリを供え、菖蒲を飾り、人は今日も水辺に向かって手を合わせる。

エンコウの立ち絵

危険度・希少度

B
戦闘力

条件がそろえば、人の命にも関わる。

B
敵対性

縄張りや禁忌に触れた者を積極的に襲う。

C
稀少性

広く知られるが、日常で出遭うことはまれ。

概要

エンコウは中国・四国地方に伝わる河童の一種で、「猿猴」と書く。毛むくじゃらで猿に似た姿とされ、金属を嫌う。川や海にひそみ、泳ぐ人や馬を水に引き込み溺れさせる。相撲を好むといい、高知では今もキュウリを供えて水難除けを祈る祭りが残る。

出現

夕暮れや大水のとき、水辺に近づいてはいけない。エンコウが待っているからだ。土佐では子どもへの戒めに「こんな時に川へ行きよったら猿猴に引っぱり込まれるぞ」と語り継がれてきた。盆の十六日に川へ入れば引き込まれるとも、相撲を挑まれるともいう。掴まれれば、そのまま水底へ連れ去られる。

伝承

エンコウ(猿猴)は広島県や中国・四国地方に伝わる河童の一種で、『物類称呼』(1775)は周防・石見・伊予・土佐で川の妖怪を猿に似たものとして「えんこう」と呼ぶと記す。本来「猿猴」はサル類を指す語で、河童の異称に転じた。土佐では「河太郎」とも呼ばれ、人や馬を川へ引き込む妖怪として語られた。

特徴

水中にひそみ、泳ぐ人間や馬を襲って川へ引き込む。俗説では肛門から手を入れて生き胆を抜き取るとも、女性に化けるともいう。金属を嫌い、キュウリを好み、相撲を好む点は河童と共通する。土佐では義理堅い一面も語られ、魚を届けた、薬の製法を教えたという伝説も残るなど、単なる害獣ではない両義的な水の主である。

エンコウのカバー画像